<展示・記念複合施設 “勝利”>(戦史博物館)(2017.09.19)

ユジノサハリンスクには「パベーダ通」、「パベーダ広場」という住所が在ります。“パベーダ”(победа)は「勝利」という意味ですが、街の住所にこの語が容れられている場合には、「第2次大戦での戦勝」という意味合いになっています。そして“パベーダ”の語が入る住所は、ユジノサハリンスク以外の街にも在ります。実際、以前に訪ねてみたドリンスクでも視掛けました。

ユジノサハリンスクのパベーダ通は、街を東西に横切るような街路で、東寄りの起点・終点が丘陵の麓になっていて、そこにパベーダ広場が在ります。パベーダ広場に関しては「戦勝広場」とも紹介されます。

パベーダ広場には、以前から<戦勝記念碑>ということで、第2次大戦期のソ連軍を代表する戦車であるT34を載せたモニュメントが在りました。辺りが見渡せるような感じの場所に、台座で高く掲げられたT34戦車が視えていました。

このパベーダ広場に隣接して大聖堂の建設、そして広場そのものにも建物の建設が始まり、暫らくT34戦車のモニュメントに近寄ることが出来ませんでしたが、2016年に大聖堂が開かれ、広場の建物も出来上がりました。

↓パベーダ広場の建物ですが、夜から早朝の暗い時間帯には酷く目立ちます。見事にライトアップされています。
ПОБЕДА (3).jpg
↑春から秋の期間、ユジノサハリンスクでは夜遅めな時間帯から早朝に掛けて“散水車”が登場します。そのために雨でもないのに路面が濡れています。濡れた路面に光が映り込み、建物は「湖畔の豪華ホテルか何か?」のようにも見えます。

この建物が<展示・記念複合施設 “勝利”>です。これは言わば「戦史博物館」というような展示施設なのです。

2016年に建物が完成していますが、博物館として普段から公開されているのでもない状況でした。2017年に至っても状況は変わりません。筆者は2017年4月以降にサハリンで活動していますが、この博物館は見学可能となってはいませんでした。

それがこの9月になって以降、「関係者風でもない人達の出入りが?」という様子を何度か視掛けました。そこで調べてみれば、「見学可能になった」というのです。

↓様子を視に行ってみました。
ПОБЕДА (2).jpg

この<展示・記念複合施設 “勝利”>ですが、月曜日が休館で毎日開いています。11時開館で18時閉館ですが、金曜日は20時閉館、土曜日は19時閉館と休前日と休日は延長会館です。

建物の向かって右側に入場券販売の窓口が在ります。入場券は300ルーブルです。

↓こういう立派な入場券です。
ПОБЕДА (1).jpg
↑表は施設の型をイメージした渋いデザインで美しいのですが、裏面には日付や時刻が書き込まれ、何やら劇場やコンサートホールの券のようです。

館内の見学に関しては「各指定時刻のガイドツアーのみ」という体制になっているので、券の裏面にガイドツアーの日付と時刻が書き込まれているのでした。開館後、30分毎にガイドツアーが組まれていて、券を求める際に「○時○分の」と指定することになります。ここを訪ねた際、10分位後に始まるというガイドツアーが在ったので、その券を求め、中央の入口から入場しました。

↓空港の保安検査のようなゲートを潜って入場すると、建物の中央に在る丸い屋根の下辺りに出ます。
ПОБЕДА (4).jpg
↑壮麗な吹き抜けになっていました。

この壮麗な吹き抜けの辺りに、同じ回のガイドツアーで入場した10人足らずの見学者が集まり、ガイドの女性の説明が始まりました。

この施設の展示スペースは4フロア在るものの、現在公開している見学可能なフロアは1フロアに留まっているということでした。

この施設は戦史に関して紹介することを目的としており、第2次大戦の他、日露戦争のような戦争や、アフガニスタンやチェチェンのような近年のものまで、19世紀後半から20世紀のロシアが関わりを持った戦争、或いはサハリン州の区域での出来事を丁寧に工夫しながら紹介することを目指しているということでした。

現在の時点で見学可能な1階ですが、第2次大戦のサハリン等での戦争に関する展示ということでした。

外から建物を視た場合に右側に相当する展示室からガイドツアーが始まりました。

最初の展示室は「史料学習コーナー」という趣きの場所でした。ガイドの女性は、極東でのソ連参戦の経過や、サハリンでの戦闘の展開に関して一通り説明し、「テーブルのような大きさになっているタブレット端末」のような機器で、叙勲されている将兵に関することや、当時の軍に関する史料、将兵の書簡のような史料を紹介していました。説明を聴きながら視て、この場所は個別に時間を掛けて史料に触れるような見学の仕方が好いように思いました。

次の展示室は、実際に現地で集めたモノも混ぜた型で造り上げられた「実寸大ディオラマ」で「占守島の戦い」の様子を紹介するものでした。

↓上陸するソ連海軍の兵士達の様子です。等身大の人形で、当時の将兵の服装が本物のように再現されていて、人形が身に付けている装備品の一部には“実物”も交じっているようです。
ПОБЕДА (6).jpg
↑「占守島の戦い」はソ連の陸海軍の混成部隊が上陸し、島に在った日本軍と交戦に及んだというものです。

↓占守島には日本軍の戦車隊が駐留しており、ソ連の将兵は戦車を持たず、限られた対戦車兵器で対抗することになり、大きな犠牲を払うことになってしまいました。
ПОБЕДА (5).jpg
↑戦車は占守島から持ち込んで、外見を整えたモノのようです。

この「占守島の戦い」に関して、ソ連軍は大き過ぎる犠牲を払い「必ずしも成功裏に進行した軍事作戦でもないのではないか?」というように思えないでもないのですが、クリル諸島に展開する端緒となっていることや、大きな犠牲が払われたという意味で注目されているようです。

ディオラマで再現された様子を視ながら、ガイドの女性は熱心に話しをしていました。最後に、このディオラマはサンクトペテルブルグの造形集団が中心になって制作されたということも紹介されました。

概ね45分間に亘るガイドツアーでした。説明はロシア語のみです。

或いはここは「順次、展示が増えて行く」という「発展途上」な場所という感じです。現在の時点では、「占守島の戦い」のディオラマに関して見応えが在るかもしれないという具合で、「史料学習コーナー」という趣きの場所に関しては「小一時間も放っておいてくれれば、随意に史料を視るのだが…」というもどかしさが在りました。他方、やがてここは戦史に関して広く立体的に学ぶことも出来る場になるという期待は沸き起こりました。

どの位の時間を要するのかはよく判りませんが、ここに例えば「日露戦争の頃のサハリン」というような展示でも登場したなら、必ず再訪したいと思いました。現時点で訪ねてみて、「建物が出来て、なかなかオープンしないが、中はどういうように?」という疑問への回答が得られたに留まった感です。

この記事へのコメント